研究概要

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  錯体とは?

 金属元素に配位子が結合した化合物を総称して「錯体(さくたい)」と呼びます。高校の化学で学習する「錯イオン」も,電荷を持ちイオンとしてふるまう錯体のことです。1894年にWernerは,「錯体とは金属陽イオンに対して窒素や酸素などを含む分子がこれらの原子の孤立電子対を配位して結合したものである」という考えに基づくいわゆる『配位説』を発表し,それ以来このような古典的な錯体・錯イオンは「ウェルナー型錯体」と呼ばれています。

 

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  有機化学と無機化学から生まれた有機金属化学

 19世紀の初め頃は,有機分子や有機基の中の炭素原子は金属と結合を作ることは出来ないと考えられていました。しかし,1827年にはエチレン分子が白金に配位したZeise(ツァイゼ)塩 K[PtCl3(C2H2)]H2Oが発見され,また1849年には典型金属-炭素結合を持つジエチル亜鉛 [Zn(CH2CH3)2] も見つかりました。このころから有機物と金属は結合を作り得ることが分かり始めたのです。有機化合物と金属が炭素-金属結合によって直接結合した化合物の化学は「有機金属化学」と呼ばれ,1900年代に入ってから活発に研究されるようになりました。また,このような錯体を「有機金属錯体」と呼びます。

 

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  新しい遷移金属-典型元素化合物を作る

 私たちの研究室では,金属-非金属結合を持つ化合物,なかでも遷移金属と典型元素(主に13~16族元素:ケイ素,ゲルマニウム,リン,硫黄など)との間に多重結合や多中心結合などの特異な結合を持つ化合物の合成と反応について研究しています。このような化合物は『無機金属化合物』あるいは『無機金属錯体』と呼ばれ,その中に含まれる化学結合は極めて多様で,変幻自在です。この特質のために,これらの化合物は触媒や機能性材料として無限に近い可能性を秘めていますが,その開発はまだ始まったばかりです。私たちは,遷移金属と典型元素とが作る極めて変化に富んだ結合を系統的に研究することによって,化学結合に関する理解を少しずつ深めながら,優れた機能を持つ化合物の合成を目指して日夜努力を重ねています。

 

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